東洋医学と現代医療|内科・循環器科・消化器科 ふじえ内科医院|群馬県高崎市

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東洋医学と現代医療

随所で見られる東洋医学への回帰現象

みなさんは東洋医学あるいは漢方薬についてどのようなイメージを持っておられるでしょうか。ついひと昔前までは、うさん臭い、あるいは信用できないなどのマイナスのイメージが強かったのではないのでしょうか。最近、ここ20年くらい前から東洋医学についての、こうしたマイナスのイメージは次第に少なくなってきました。その理由はいろいろあるでしょうが、いちばん大きな理由は、いわゆる西洋医学を中心とした現代の医療に対する一種の不信感、あるいは現代の医療では解決できないさまざまな病気・症状に対する無力感、それらが複合して東洋医学への回帰現象が起きているのではないでしょうか。

現在の日本において医師・薬剤師・看護師・診療放射線技師(レントゲン技師)・臨床衛生検査技師など、医療に携わる人たちはすべて、その学生時代に西洋医学を学んでいます。また、それらの資格試験にも西洋医学以外の課目はほとんど出題されません。ただし、学生らに「西洋」の医学を学んでいるという意識はほとんど存在しないと思います。なぜなら彼らの学ぶ医学のすべてが西洋医学であり、その対極にある、あるいは対をなしている東洋医学についてはほとんど学ぶ機会はなく、場合によってはその存在すら知らされていないのが状況だったからです(最近では大学の講座にも東洋医学の講座ができたり、保険薬となった漢方エキス製剤の広まりで、状況は変わりつつあります)。

「古くて新しい分野」として認知高まる

実際、今から20年以上前は医師が東洋医学を勉強しているというと、まわりの医師やさらには患者さんからも、眉に唾をつけて見られたものです。いわば東洋医学を取り入れようとしている医師はちょっと変人扱いされていたのです。今でこそこういう傾向はなくなってきましたが、それでも最も保守的なのは未だに医師・看護師などの医療従事者自身ではないでしょうか。そして、この古くて「新しい」分野を積極的に受け入れようとしているのは患者さん自身だと思われます。

東洋医学といってもその意味するところは広範です。中国の伝統医学から生まれ育った中医学(中国医学)がその基本をなすことはいうまでもありません。いわゆる日本漢方はその中医学から派生した東洋医学の一派といえるかも知れません。また、インド哲学に基づいたアーユルヴェーダ医学も広く東洋医学の一つと言えるでしょう。

中医学には大きく分けて二つの分野があります。その一つは本草学(いわゆる漢方薬を中心とした薬物学)であり、もう一つは鍼・灸を中心とした鍼灸学です。漢方薬にしろ鍼灸にしろ、その科学的メカニズムが西洋医学的な手法では、まだはっきりわからないところに問題点があることは否めないでしょう。最近では漢方薬の成分の一部が抽出され、その分子の構造式まで判明しているものもあります。しかし、それらはまだごく一部で、ほとんどの成分や作用機序は不明です。おそらく様々な成分が生体に複合的に作用しているのでしょう。この漢方薬については次第に市民権を得つつあり、積極的に活用している医師も多くなってきました。また、科学的事実を重要視するアメリカでも、最近FDAという日本の厚労省にあたるお役所が、一部ではありますが漢方薬を認めるようになってきました。

西洋医学・東洋医学、それぞれの得手を活かした医療

このように東洋医学は多くの謎に包まれているわけですが、それがさまざまな誤解を生み出す原因になっており、またあまり世間に認知されていない理由にもなっています。でも、患者さんの立場になって考えると、そのメカニズムはどうであれ、病気や症状がよくなればいいわけです。東洋医学はそのメカニズムは未だ不明の点が多いのですが、だからといって、いわゆる心霊手術や呪術的医療などの迷信医療とはまったく異なり、中国4000年の歴史の中で培われてきたれっきとした科学(西洋的な科学というよりは哲学に近い)なのです。その中で、生理学・解剖学・病理学・診断学・治療学などが、独特の体系にのっとり発達してきたのです。ただ、そのアプローチの仕方が「東洋的」であり、明治維新以降、西洋的なものの考え方しかできなくなってしまってきた私たちには、理解し難いだけなのです。

西洋医学・東洋医学ともに得手不得手があります。当院ではどちらにも片寄らず、患者さんにとって最善・最良の医療を、患者さんと共に考えていこうと思います。